片山穣 Joe Katayama
Works CV Biography
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ろうけつ染めに独自の技術を加えた染色技法で作品を制作している片山穣。
多くの制約が伴う中で綿密に計画され、幾度も繰り返される染色の作業工程と、それを成し遂げられる片山の技術と器量によって、絵柄が何層にも重なり、繊細な作品の表情を出すことを可能にしています。
絵画とは異なり、「染め」は色を重ねても表面に凹凸が出来ません。しかしながら、何度も重ねられた色が糸の中に染み込み、制作過程で試行錯誤をした痕跡が生地の表面に現れることで、染料ならではの透明感のある発色と柔らかで深みのある表情が作られるのです。
「制約が多く、修正の効かない手法で作品を制作することは、柵の多い社会の中でどう生きていくか考える事と似ている」と考える片山は、作品を通じて社会と共振し、新たな染めの可能性を探求しています。
片山がモチーフとする風景は、都心の交差点だったり、太陽の光が降り注ぐ海岸線だったり、時には動物や草花をクローズアップしたもの等様々ですが、そこから彼が引き出す静謐な空気感と染め特有の雰囲気を上手く交わらせることで、既視感のある日常の側に潜む気持ち良い瞬間にリンクするよう描いています。
片山は、「Chill」という一貫した自身の作品テーマを掲げ、観る者が現実から離れて自身と向き合い、心を落ち着かせるための役割を持たす事を目指しているのです。また、近年の特徴の一つとも言える、作品中に散りばめられている点(ドット)は、蝋を用いてフリーハンドで描いた痕跡による図柄です。単純な行為の蓄積でありながらも、モチーを干渉しない絶妙な間隔で並べられることにより、心地良い時の経過が感じられ、大小やドット自体の色彩に変化をつけることによって、感情の振れ幅と視覚的な効果がより強く感じられるよう工夫されています。